2007年4月20日金曜日

食べ物の巻2 エコへのこだわり?

このように食に関してはなぜか控えめなイギリス人だが、健康・安全というキーワードには敏感だ。日本でも最近はオーガニックフードがにわかに人気を集めているようだが、それでもまだまだアクセスの悪さが目立つ。たとえばオーガニック野菜などはかなりお高く、学生や貧乏人には手が出ないというイメージがまだある。

一方、英国内では大手スーパーマーケットのオーガニックフードコーナーをはじめ専門店も多く、わたしの住んでいる人口800人の村には小さな個人商店が2つしかないが、それでもオーガニック食品のコーナーがある。またお値段もせいぜい20~30%増し程度なので庶民でも手の届く範囲におさまっている。これはマーケットの大きさによるものだと考えられるが、多少高くても安全にはお金をかけましょうという消費者の意識の高さが感じられる。生鮮食品にとどまらず、嗜好品、加工食品やインスタント食品までオーガニックな素材にこだわった商品開発が進んでいる。

しかしよく見てみると、野菜類はほとんど外国産。フランスやスペインならまだしもイスラエルやトルコなど遠方からやってきているものもある。しかもせっかくのオーガニック野菜が細かく刻まれ水洗いされ、ビニルのパッケージに入って海外から輸送されているのだから、いただけない。オーガニック素材を選びつつ、かつ便利さを追求するという姿勢は合理的と呼ぶべきだろうか。もっとも「これじゃ、風味がなくなるじゃない」と文句を言っているのは外国人で、イギリス人は味にはこだわらないようだ。

食べることは人間の基本。単に栄養を補給する行為ではない。料理はさまざまな先人の知恵、地域の文化を伝える技であり、食事は季節を感じ、自然や生命をいつくしむ時間であってほしい。ここではプラスチックの大皿に数種類のメニューをどかどかと山積みにして食べるのをよく目にする。皿洗いの水と洗剤を節約できると言われると、確かに合理的かもしれないけれど、いつも抵抗感を感じている。代表的な英国料理のフィッシュ・アンド・チップスでさえ、いまや自宅で作る人はほとんどいないと聞いて驚いた。家が汚れるし廃油を捨てると環境に悪いからと言われても、やはり納得がいかない。

インスタント食品や出来合いのお惣菜の類は、日本でももはや欠かすことのできないアイテムだ。魚をさばいたりフライの衣をつけたりする加工は、人件費の安い東南アジアなどで行われていたりもする。わたしもフルタイムの仕事を持ち、帰宅が10時頃だったころは漂白された剥きごぼうを使ったものだ。仕事を辞めて、ごぼうの味を改めて知った。便利の裏で失っているものを、忘れないでいたいと思う。

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