2007年9月24日月曜日

リサイクルの巻3 買うべきか買わざるべきか

不要になった携帯電話を郵送で回収してリサイクルするというチャリティー団体もある。日本では携帯電話の買い替えサイクルが欧米よりも短いようだが、イギリスでもタダで新しい機種に変えられるサービスがあるらしい。高校生が「やっぱり最新デザインでなきゃ。古い携帯なんて友達に馬鹿にされるから」と言うのを耳にすると、資本主義の消費者心理は世界中同じなのかと思わず唸ってしまう。

携帯電話に使われているハイテク部品には、金などの希少金属や半導体のような人体や環境に悪影響を与える有害物質が含まれている。法的にはメーカーが責任を持って回収・処分すべきだが、家庭ゴミと一緒に埋め立てられるものや、家庭に置かれたままのものもかなりの量にのぼるだろう。そのような携帯電話を簡単に回収するために、封筒に入れて投函すればよいという仕組みはよいと思う。大手スーパーでも回収に協力をしている。

「リサイクル」は新ビジネスを生み出し、新たな消費につながる可能性がある分、政府も企業も力を注いでいるが、免罪符のように使う傾向は反省する必要がある。服にしても携帯にしても、そもそも買い控えるべきだというのが大原則なのだから。

ただ、不用品の処分方法として再利用できるものは再利用する、安易に焼却や埋め立てしないのがせめてもの消費者の義務だろう。その際、環境問題にはまるで理解のない人も対象にするのだから、仕組みはできるだけシンプルで簡単でなければならない。できれば楽しく美しく、参加したくなる仕掛けもほしい。
見ている人が「わたしもやりたい」と思わせる、そんなエコライフを実践できたらと思う。

リサイクルの巻2 素敵なリサイクル

それでも最近はそんな世間の悪評を何とか返上しようと、頑張っている市民グループも増えている。「イギリス人は生まれつきリサイクルが嫌いなわけではない」ゴミの分別を呼びかけるパンフレットの文言に思わず苦笑してしまった。

一方「これは是非輸入したい」というユニークなリサイクルもある。
たとえば街中にいくつもあるチャリティー・ショップ。それぞれNGOによって運営されており、収益金は癌患者や高齢者へのサポート、第三世界の地域開発や動物愛護などさまざまなチャリティー目的に使われている。古着や古本、家具、生活雑貨など、なかなかおしゃれな良質なものが安く手に入り、わたしも愛用している。

日本でも伝統的には古本屋、最近では各種中古品を扱うリサイクル・ショップやフリー・マーケットなど中古の再利用は増えてきたが、それを大々的に慈善事業に役立てているわけだ。全英のチャリティー・ショップの売り上げを合計すると、年間100億ポンドを超える寄付金が集まっている計算になるらしい。なるほど現金の寄付はなかなかできないけれども不用品を他人のために役立てるくらいならできるという人は多いだろう。資源としてリサイクルするより再利用の方がエネルギーもかからないから環境的にもいい。どこにでもあって持ち込みが簡単なのも◎だ。スーパーに古着や古本を回収するボックスが置いてあるところもある。

リサイクルの巻1 リサイクルはお嫌い?

天気の話が大好きと言われるイギリス人だが、天気の話となれば地球温暖化が出てくると言ってもいいほど、地球規模の環境問題は人びとの日常的な関心事となっている。環境教育のための教材やプログラムも充実しるし、ロンドンのような大都市はもちろん、小さな町村でも環境をテーマにした講演会やシンポジウム、エコイベントのお知らせをよく目にする。

しかしながら、ことリサイクルに関しては、英国はヨーロッパの中でも後進国に甘んじている。国全体で資源リサイクルに取り組み出したのは日本と同じく2000年頃だが、実はゴミの分別収集などはつい最近始まったばかりという自治体も少なくない。EU諸国との条約にもとづき埋め立てが制限されてから、ようやくペットボトルなどの容器もリサイクルするようになったが、たとえばビンは多くの地域で回収の対象にもなっていない。

英国内でリサイクルが進まない理由のひとつにあげられるのが市民意識。「ゴミの分別なんて生真面目なドイツ人のやること。イギリス人には無理」と言い切る人と何度も口論したことがある。「日本でも最初は抵抗があったけど、一度定着すれば案外面倒ではないことがわかって実行するはず」と。

一度決められたルールは周囲が実践している以上、不承不承でも従うのが日本人のお国柄。ゴミの分別収集が始まった当初は多少の混乱や不満の声があったものの、数年のうちに見事に浸透した。黒のビニール袋が透明に変わって以来、分別が驚くほど徹底されたらしいが、これは他人の目を気にする日本人特有の行動パターンが功を奏したケースと言えるだろう。日本では環境問題を頭で理解させようとするよりも、まずルール化しマナーに訴えるほうが、高い効果が期待できるのかもしれない。

一方、他人の指図を嫌い、権力やルールにはまず反発すると自称するイギリス人はどうか。やはりあちこちで徹底した抵抗攻撃が起こっているようだ。最近「きちんと分別していないゴミは収集しません」という自治体が出てきたが、ゴミの分別の仕方をとがめられた主婦がテレビのインタビューではげしく反論していた。役所に抗議しているのではなく、公共の電波を使って「誰がこんなルールを決めたのか。わたしは絶対従わない」と全国放送で訴えているのだ。

面倒と言っても、生ゴミと燃やせないゴミとリサイクルゴミの多くて3種類。しかも玄関先まで収集に来てくれるのだ。日本の地方の町村には20とか40とか恐ろしい分別を実行している自治体もあるという話をすると、感心するよりも呆れられた。この国ではゴミ収集のスタッフもさぞかし苦労するだろうと同情せざるを得ない。

2007年9月13日木曜日

ウェールズで有機農家になる3

ビニルハウスができてだいぶ栽培計画に幅がでてきた。この辺で真面目にデザインプランが必要だ。私もクリスもウェールズではもちろん、室内栽培の経験はない。そこでガーデンデザイン・ミーティングを提案した。

この辺りは
CATの影響か、有機農業や自然保護など環境問題への関心が高くいろいろな取り組みがされている。その人たちの知恵を借りない手はなかろう。デザインやオーガニック農業の技術はもちろん、資材や種などの調達先、行政の補助金やマーケティングなど、ここで初めて農業に取り組むために必要なことを教えてもらいたい。初めての土地で共通の趣味や関心をもった友達をつくるにも役立つだろう、とわくわくしながら準備をする。

初めてのミーティングはハウスの中で行った。コミュニティガーデンを運営していたクローイは、過去に温室でメロンを作ったという。熱帯の果物も栽培可能だということがわかってリンが興味を示していた。

つる性の雑草については、根気よく除根するしかなさそうだ。使わないときはできるだけダンボールやプラスティックシートで覆うこと、耕運機は根を細かく刻むだけで、すぐに生き返ってくるからヤブ蛇だということがわかった。その他、ハーブの使い方や温度管理のことなど参考意見が聞けて、多いに勉強になった。

ミーティングの後で参加してくれた人たちに日本食をふるまった。参加者の半分がベジタリアン。そのうち2人はビーガンと言われる超菜食主義者で魚も卵もダメときている。栗ご飯、ひじきの煮つけ、ほうれん草と人参の胡麻和え、ナスとカボチャの煮びたし、豆腐とトマトのサラダ、精進料理のようなメニューになったが、なかなか好評だった。

こちらの人はオーガニック野菜にはとても関心が高く、有機で野菜を作っていると言うと、まだ種を蒔いたばかりというのに売ってくれと頼まれるほどだ。それはそれで嬉しいのだが、彼らは食べることそのものにあまり興味がなく、白菜やニラ、春菊など何でも生で食べてしまう。サラダ以外に葉モノの食べ方を知らないのか、研究しようという意欲もなさそうだ。

作物を作ることだけでなく、料理や食べることも含めて学んだり交流できたらいいなと思い、今後も定期的にミーティングと会食をしようと考えている。

ウェールズで有機農家になる2

10月の気温は最高でも1516度。寒い日は23度近くまで下がることもある。ちょっと寒すぎるだろうと思ったが、ものは試しだ。ほうれん草、水菜、雪菜を直播してみる。にんにく、玉ねぎも植えつけた。播種後約5日で水菜、雪菜が芽を出した。ほうれん草はどうも失敗したようだ。やはり発芽には気温が低すぎたのだろう。せっかく芽を出したと喜んだ水菜と雪菜も、いつの間にか姿を消している。これも寒さでやられたのだろうかと訝しがっていたら、ネズミの仕業ということが判明した。

実はここはネズミの食害が悩みの種らしい。ジョーはチョコレートを餌にネズミとりを仕掛けたというので、ならってやってみた。ところが敵はなかなか賢い。チョコレートだけがなくなって当のネズミは一向につかまらない。間抜けなビギナー農家を尻目にネズミは大暴れ。かわいそうな雪菜は次々に餌食になった。

外の作業はさすがに辛くなってきた頃、温室を借りることにした。温室とガラスは入っておらず、骨組みだけ。6人がかりで巨大なビニルシートを張った。翌朝起きられないほど筋肉痛になったが、とにかくシートが張られ天井ができた。普通のビニルハウスよりも天井の高いのがよい。両側の入り口サイドはクリスが根気よくガラスを張って、何とかビニルハウスが完成した。

ハウスの作業の快適なこと!外では真冬の格好をしているというのに、室内は
25度を越える暑さだ。タンクトップで作業をする日もあった。真夏は水着で仕事をしなくてはならないかもしれないと冗談を言い合う。

ウェールズで有機農家になる1

家から自転車で15分ほどのところに畑を借りられることになった。家主のピーターとリンはユニークなアーティスト夫婦で、州から農地保全のための補助金を得て、有機農業を目指す若者に安く貸している。全体で2ヘクタールほどの土地に3棟の温室と2棟のビニルハウス、その他ピーターのスタジオとキャラバンが3軒。一般の農場と異なって色とりどりの花やハーブ、果樹が庭を活気よく見せている。

今年から契約したというジョーは、パートの仕事や娘の子守の合間に畑にやってくるので、なかなか野菜づくりに本腰が入れられない。地域の宅配野菜にトマトやほうれん草を出荷しているが、温室のトマトはすっかり放置状態。ほうれん草も間引きを怠っているうちに押し競饅頭だ。これもパーマカルチャーのテクニックの一つなのだろうか、それとも単なるナマクラなのか。

日本でも最近流行っている自然農法。こちらでもよく話題になっているし、コースなどもあちこちで行われている。私もいくつか受講してみたが、理論はわかっても具体的な技術になると曖昧だし、実際にきちんと生産しているガーデンを見たことがなく、いま一つ納得できていない。実践しながら理解するのが一番。ここでいろいろ実験、体験したら自分なりの手法を獲得でくるだろう今からわくわくしている。ちなみにジョーの野菜は見た目は悪いが、味は驚くほどいい。彼の手伝いをしながら、この夏は今まで食べたことのないような甘くておいしいトマトを毎日食べることができた。

クリスと私は、ジョーと一緒に土地の一部とビニルハウスを借り受けることにした。600平米の土地は素人が始めるには十分な広さだ。ガラスが入っていないが2棟のグリーンハウスもあるし、給水施設も近くにあってとても便利だ。意気揚々と土づくりにとりかかる。シバムギがはびこって除草に一苦労。取り憑かれたように雑草と格闘するクリス。おかげで腰痛に泣くことに…。

2007年5月19日土曜日

羊の巻


ウェールズの春は美しい。おとぎ話に出てくるような緑の丘に、子羊が軽やかにギャロップする姿を見ると誰でも幸せな気分になる。羊たちはどこへでも我がもの顔で移動し、自由気ままに草木を食んでいる。マイペースなイギリス人を象徴するかのようだ。

日本人旅行客にもこよなく愛されている英国特有の丘陵草原風景。実はこの羊たちによって創られている。つまり彼らがせっせと雑草や幼樹を食べてくれるおかげで、見渡す限り広がる草原の景観が保たれているのだ。実際、羊農家の一部は肉や羊毛が目的ではなく、草地の維持管理のために羊を飼っており、国も景観保全の名目でそれに補助金を出している。なんでも見境なく食べているように見える羊たちだが、特定の植物を食べない性質があるらしく、地域によってはそれらの植物保全の役割も果たしているそうだ。日本でも河川敷や田舎の道路わきの雑草地は羊に草刈をお願いしたらどうかと思ったりする。あるいは観光地や街中の公園に羊が登場したら人気を呼んで一石二兆じゃないだろうか。
もっとも自然の遷移を人為的に抑えて人間の好む景観を保持することに、ちょっと不自然さを感じなくもない。とくにウェールズの羊たちは海岸沿いの絶壁や国立公園内のお花畑にも出現し、場所によっては逆に植生に害を与えているようにも見える。そう思って聞いてみたら、最近は増えすぎないように、国が補助金を制限しているそうだ。

それにしてもあのふわふわした毛、セーターにしたらいかにも気持ちよさそうだが、衣類用の羊毛は輸入に頼っているというからちょっとがっかり。一つの理由にはウェールズの羊毛は固くて衣類には向かないらしいが、加工の手間賃の問題が大きそうだ。今のところ有力な利用方法として住宅の断熱材が注目されているが、それもオーストラリアやニュージーランドからの輸入が大半で、逆にメイド・イン・ブリテンの羊毛は75%輸出されているというのだから、グローバル経済恐るべしだ。のどかにじゃれている羊たちにも、人間の営みにともなう裏話がいろいろあるらしい。もちろん彼らは草を食べるのに忙しくてそんなことはまったくお構いなしだけれど。

2007年4月21日土曜日

食べ物の巻3 オーガニックかローカルか

先日参加したタウン・ミーティングでは地元農家を支援するグループがスーパーマーケットのオーガニック商法に反発していた。輸送に大量のエネルギーを用い、包装などの無駄を生む輸入野菜は環境によくないという主張だった。

ウェールズは雨が多いせいか生産性も低く、野菜農家自体少ないため、輸入物に頼らざるをえない。大手スーパーで大量のオーガニック野菜が売られれば、地元の小規模な農家はひとたまりもないだろう。地元の野菜の方が新鮮でエネルギーの無駄もない、地域経済を支えるためにもローカルな野菜を食べましょう、という地元農家の切実な訴えもよくわかる。

そういえば「フードマイル」という食糧の移動が環境に与える影響を最初に試算したのはイギリス人だった。消費者運動家ティム・ラング氏は「食は地産地消(生産地と消費地が近いこと)が望ましい」という考え方を提唱した。輸送にかかるエネルギーなど環境的な負荷だけでなく、生産地が発展途上国で消費地が先進国という場合、生産地が消費地から受ける経済的圧迫も無視できない。イギリスの国民一人当たりフードマイルは約3200(トン×キロメートル)(2001年)。食糧自給率は7割。ちなみに日本のフードマイルは世界一で7000を超える。食糧自給率は4割だ。

英国内の有機農家に対しては若干の補助が政府から出ているが、それでも有機での生産はもともと単位あたりの収量が限られる。有機農業一本で生計をたてるのはここでもやはり難しいらしく、ほとんどがB&Bを営むなど他の収入源をもつ兼業農家である。

野菜の販売ルートはいろいろで近頃ではボックス・スキームと呼ばれる契約型販売も流行している。有機農家と消費者が直、あるいはコーディネーターを通して契約。定期的に数種類の野菜や果物、乳製品などが届くというシステムだ(日本でもいくつかのサービスがある)。国内40000世帯に毎週ボックスを届けているというコーンウォールの有機農場では、夏の間は300人の人が雇われるそうだ。しかし、冬になるとその数は50人以下に減り、しかも働き手の半分以上はポーランドからの移民だと聞いて、とても複雑な気持ちになった。

マーケットが確保されていることは生産者にとっても有利な条件だが、大規模な消費に対応するには必ず担い手の問題が発生する。安全な食品が誰にも簡単に手に入るのはいいことだが、それを支える人たちの生活はどうなっているのか。

最近では日本でも農家の働き手に中国やベトナムから来る人たちが増えているというが、彼らの働く環境に問題はないのだろうか。消費者が望むものは安全でおいしくて、環境にもよくて、安くて便利。しかもいつでも好きなだけ好きなものが食べられる。果たしてそんな食べ物がつくれるのだろうか。そして、それが他者からの搾取に支えられなければならないとしたら…。

おりしもタウンミーティングでは、これまで月に2回開かれていたファーマーズマーケットに対する市役所の助成が打ち切られるという話がもちあがっていた。その話をきっかけに地元農業をいかに支援していくかで熱い議論が交わされた。「消費者へ地域農業をPRするためのイベントを開催しよう」「テスコ(大手スーパー)進出反対の陳情書を出しましょう」「学校給食へアプローチしたら」こんなとき、彼らの行動は素早い。あっという間に10月のイベント計画がスタートした。

イスラエル産のオーガニックポテトを買うか、国産の非オーガニックを買うか、いつも悩んでしまう。消費者はますます複雑な選択をせまられているのだ。

2007年4月20日金曜日

食べ物の巻2 エコへのこだわり?

このように食に関してはなぜか控えめなイギリス人だが、健康・安全というキーワードには敏感だ。日本でも最近はオーガニックフードがにわかに人気を集めているようだが、それでもまだまだアクセスの悪さが目立つ。たとえばオーガニック野菜などはかなりお高く、学生や貧乏人には手が出ないというイメージがまだある。

一方、英国内では大手スーパーマーケットのオーガニックフードコーナーをはじめ専門店も多く、わたしの住んでいる人口800人の村には小さな個人商店が2つしかないが、それでもオーガニック食品のコーナーがある。またお値段もせいぜい20~30%増し程度なので庶民でも手の届く範囲におさまっている。これはマーケットの大きさによるものだと考えられるが、多少高くても安全にはお金をかけましょうという消費者の意識の高さが感じられる。生鮮食品にとどまらず、嗜好品、加工食品やインスタント食品までオーガニックな素材にこだわった商品開発が進んでいる。

しかしよく見てみると、野菜類はほとんど外国産。フランスやスペインならまだしもイスラエルやトルコなど遠方からやってきているものもある。しかもせっかくのオーガニック野菜が細かく刻まれ水洗いされ、ビニルのパッケージに入って海外から輸送されているのだから、いただけない。オーガニック素材を選びつつ、かつ便利さを追求するという姿勢は合理的と呼ぶべきだろうか。もっとも「これじゃ、風味がなくなるじゃない」と文句を言っているのは外国人で、イギリス人は味にはこだわらないようだ。

食べることは人間の基本。単に栄養を補給する行為ではない。料理はさまざまな先人の知恵、地域の文化を伝える技であり、食事は季節を感じ、自然や生命をいつくしむ時間であってほしい。ここではプラスチックの大皿に数種類のメニューをどかどかと山積みにして食べるのをよく目にする。皿洗いの水と洗剤を節約できると言われると、確かに合理的かもしれないけれど、いつも抵抗感を感じている。代表的な英国料理のフィッシュ・アンド・チップスでさえ、いまや自宅で作る人はほとんどいないと聞いて驚いた。家が汚れるし廃油を捨てると環境に悪いからと言われても、やはり納得がいかない。

インスタント食品や出来合いのお惣菜の類は、日本でももはや欠かすことのできないアイテムだ。魚をさばいたりフライの衣をつけたりする加工は、人件費の安い東南アジアなどで行われていたりもする。わたしもフルタイムの仕事を持ち、帰宅が10時頃だったころは漂白された剥きごぼうを使ったものだ。仕事を辞めて、ごぼうの味を改めて知った。便利の裏で失っているものを、忘れないでいたいと思う。

2007年4月19日木曜日

食べ物の巻1 イギリス料理はまずい?

英国内で外国人が集まれば、まず食べ物の話題になる。見知らぬ者同士でも、イギリスの食文化がいかに貧しいかという話をすれば1時間は盛り上る。 食にこだわる国は滅びる運命にあると誰かが言ったが、大英帝国の発展は食を犠牲にして成り立ったのだろう、とわたしも確信している。

とってつけたように聞こえるかもしれないが、料理のうまいイギリス人に招かれて食べる伝統的なイギリス家庭料理はなかなかのものだ。残念ながら、そんな料理上手はもはやナショナルトラストにでも登録されているのではないかと思うほどで、めったにお目にかかれないが。近年グルメブームで外食産業もだいぶレベルアップしたと言われているが、それとて眉唾もの。ふらりと入ったレストランやパブの料理に期待は禁物だ。冷凍食品をレンジでチンしただけの料理か、さもなくば恐ろしく高い料金に失望する危険性が高い。

もっとも、この国では乏しいイギリス料理のレパートリーを補うように、世界の各国料理が堪能できるという特別な楽しみがある。インド料理、中国料理のテイクアウト(味の保証はないが)はどんな田舎の小さな町にも必ずあるし、ロンドンのような都会だったらヨーロッパ各国はもちろん、トルコ、レバノン、メキシコ、タイ、ベトナム、インドネシア、韓国そして日本とまさに世界中のしかも現地人のつくる本格的なものが手に入る。

日本食はヘルシーでファッショナブルだともっぱらの人気だ。もっともきちんとした和食を食べさせる店はどこも法外に値段が高いので、そういう店に集うのはヤッピーと呼ばれるリッチでグルメなイギリス人か接待の日本人ビジネスマンと相場は決まっているが。このところポンド高で、外食は基本的にどこで何を食べても高いのだが、一切れ250円の海苔巻き(それも中味はツナかキュウリときている)を見たときはさすがに驚いた。海苔巻き屋台でも始めようかとひそかに考えている。
(写真:アボガドの巻き寿司、その名も青虫ロール