

ただ、不用品の処分方法として再利用できるものは再利用する、安易に焼却や埋め立てしないのがせめてもの消費者の義務だろう。その際、環境問題にはまるで理解のない人も対象にするのだから、仕組みはできるだけシンプルで簡単でなければならない。できれば楽しく美しく、参加したくなる仕掛けもほしい。
見ている人が「わたしもやりたい」と思わせる、そんなエコライフを実践できたらと思う。
初めてのミーティングはハウスの中で行った。コミュニティガーデンを運営していたクローイは、過去に温室でメロンを作ったという。熱帯の果物も栽培可能だということがわかってリンが興味を示していた。
つる性の雑草については、根気よく除根するしかなさそうだ。使わないときはできるだけダンボールやプラスティックシートで覆うこと、耕運機は根を細かく刻むだけで、すぐに生き返ってくるからヤブ蛇だということがわかった。その他、ハーブの使い方や温度管理のことなど参考意見が聞けて、多いに勉強になった。
ミーティングの後で参加してくれた人たちに日本食をふるまった。参加者の半分がベジタリアン。そのうち2人はビーガンと言われる超菜食主義者で魚も卵もダメときている。栗ご飯、ひじきの煮つけ、ほうれん草と人参の胡麻和え、ナスとカボチャの煮びたし、豆腐とトマトのサラダ、精進料理のようなメニューになったが、なかなか好評だった。
こちらの人はオーガニック野菜にはとても関心が高く、有機で野菜を作っていると言うと、まだ種を蒔いたばかりというのに売ってくれと頼まれるほどだ。それはそれで嬉しいのだが、彼らは食べることそのものにあまり興味がなく、白菜やニラ、春菊など何でも生で食べてしまう。サラダ以外に葉モノの食べ方を知らないのか、研究しようという意欲もなさそうだ。
作物を作ることだけでなく、料理や食べることも含めて学んだり交流できたらいいなと思い、今後も定期的にミーティングと会食をしようと考えている。
実はここはネズミの食害が悩みの種らしい。ジョーはチョコレートを餌にネズミとりを仕掛けたというので、ならってやってみた。ところが敵はなかなか賢い。チョコレートだけがなくなって当のネズミは一向につかまらない。間抜けなビギナー農家を尻目にネズミは大暴れ。かわいそうな雪菜は次々に餌食になった。外の作業はさすがに辛くなってきた頃、温室を借りることにした。温室と言ってもガラスは入っておらず、骨組みだけ。6人がかりで巨大なビニルシートを張った。翌朝起きられないほど筋肉痛になったが、とにかくシートが張られ天井ができた。普通のビニルハウスよりも天井の高いのがよい。両側の入り口サイドはクリスが根気よくガラスを張って、何とかビニルハウスが完成した。
ハウスの作業の快適なこと!外では真冬の格好をしているというのに、室内は25度を越える暑さだ。タンクトップで作業をする日もあった。真夏は水着で仕事をしなくてはならないかもしれないと冗談を言い合う。
今年から契約したというジョーは、パートの仕事や娘の子守の合間に畑にやってくるので、なかなか野菜づくりに本腰が入れられない。地域の宅配野菜にトマトやほうれん草を出荷しているが、温室のトマトはすっかり放置状態。ほうれん草も間引きを怠っているうちに押し競饅頭だ。これもパーマカルチャーのテクニックの一つなのだろうか、それとも単なるナマクラなのか。
日本でも最近流行っている自然農法。こちらでもよく話題になっているし、コースなどもあちこちで行われている。私もいくつか受講してみたが、理論はわかっても具体的な技術になると曖昧だし、実際にきちんと生産しているガーデンを見たことがなく、いま一つ納得できていない。実践しながら理解するのが一番。ここでいろいろ実験、体験したら自分なりの手法を獲得でくるだろう今からわくわくしている。ちなみにジョーの野菜は見た目は悪いが、味は驚くほどいい。彼の手伝いをしながら、この夏は今まで食べたことのないような甘くておいしいトマトを毎日食べることができた。
クリスと私は、ジョーと一緒に土地の一部とビニルハウスを借り受けることにした。600平米の土地は素人が始めるには十分な広さだ。ガラスが入っていないが2棟のグリーンハウスもあるし、給水施設も近くにあってとても便利だ。意気揚々と土づくりにとりかかる。シバムギがはびこって除草に一苦労。取り憑かれたように雑草と格闘するクリス。おかげで腰痛に泣くことに…。