2009年3月17日火曜日

私には何ができる?(トランジション・アベリストウィズ)

私は2006年3月から2007年9月に渡ってウェールズのアベリストウィズ(人口約1万4千人)という町の郊外に住み、コミュニティガーデンを主宰しながらトランジションに参加した。毎月ミーティングを開き、約80人のメンバーがメーリングリストで情報交換しながら、そこで出てきた案をもとにプロジェクトを企画・実践している。最初はピーク・オイルをテーマにした映画を観たり講演会を開いたりと、「課題を知ること」「意識づくり」からスタート。次は「エネルギー」「交通」「建築」等のテーマグループ別にいくつかの部屋に分かれて、具体的にどんなことができるかを話し合った。

私の参加した「食」のグループでは「子どもの健康が心配。学校給食を考え直したい」「市民農園が空くのを2年も待っている。遊休農地を開放してほしい」「近所の公園が芝生だけなので、りんごなどの果樹を植えたい」などの意見が次々と出た。ファーマーズ・マーケットを運営している団体の女性からは「これまで月に2回開かれていたマーケットに対する市役所の助成が今年度から打ち切られた。助成を続ける請願に協力してほしい」という提案があった。それをきっかけに地域の食や農業をサポートするべきだという議論が白熱。その中で「消費者の意識変革を促すイベントを開催しよう」という案が出された。こんなとき、彼らの行動は素早い。あっという間に半年後のイベント計画がスタートした。「依存から自立・共存へ」「トップダウンからボトムアップへ」はトランジション・イニシアティブのスピリッツだが、行政や大きなパワーに依存するのではなく、小さくても市民自ら行動することの大切さを実感するプロセスだった。

TTAbe(Transition Town Aberystwithの略)ではクリスマス市と組んでファーマーズ・マーケットを開催。ちらしを撒くなどして地域の食や農業についてPRをしたり寄付金を募ったりした。また、「フード・ディベート」と称して「食」に関するさまざまな情報やアイデアを持ち寄る会も開いた。地元の伝統的な野菜の種を保全しようというグループ、フェア・トレードの推進団体、野草の料理をデモンストレーション(この日はイラクサ入りのオムレツ)するグループ、パーマカルチャー、有機農家認定団体、ビーガン(完全菜食主義)グループなどが集まり、会場は関係者なのか一般の人なのかわからないが大勢の来場者でにぎわっていた。

このイベントを通じてガーデン好きのネットワークがぐんと広がった。私のコミュニティガーデンにもボランティアが来てくれるようになり、そこで種や苗の交換をしたり野菜の宅配を始めるようにもなった。菜園に挑戦したいがスペースがないという人のためには、遊休農地や公共用地を紹介するマッチングのイベントも開催された。名づけてガーデン・エクスチェンジ。それがきっかけで、友人のグループが教会の用地を借り、さらに参加者を募って来春には住民主催の市民農園をオープンすることになった。「分断からつながりへ」「GetからCreateへ」もトランジションのスピリッツである。人を巻き込み、はずみをつけて触媒のような働きをするイメージが湧いてくる。

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