2009年3月17日火曜日

みんなでできることを持ち寄って

「ペンパーキー・グリーン・イベント」(ペンパーキーは市内のある町内会の名前)もトランジションらしいイベントのひとつだ。お年寄りの知恵や我が家の伝統的な技を集めて地域のグリーン・リソースを開拓し、参加した人がそこで学んだアイデアを家に持ちかえり実行してもらうことをねらいとしている。残り物を利用した料理や編み物のデモンストレーションがあったり、バイオディーゼルやガーデニングの本の販売があったり、とても楽しそうだ。


スキルスシェアを推進するグループの冊子を開くと「草刈します」「犬の散歩をします」「ブラックベリージャム作ります」「ジーンズのすそ上げします」「自転車修理します」などなど、一見技術とは呼べないようなものでも、あったら便利、しかも民間サービスに頼るよりも実はお得な小技がたくさん登録されている。「いついつどこどこへ定期的に車で行くが、同乗したい人はお知らせください」というカーシェア情報もあった。このグループのルールでは、基本的にはお金を使わずに自分の技術や労働を提供することでサービスを受けられる仕組みになっているが、サービスをお金でやりとりするケースもある。

いずれにしても、地域内の資源やサービスを地域内で活用、循環することは、環境への負荷を減らすばかりか、地域コミュニティの活性にもつながる。大型スーパーや通販で手に入るものは、聞いたこともないどこかの国で、それも不公平な労働によって生産され、さらに莫大な石油エネルギーを費やして搬入されたものかもしれない。それらの安物を壊れては捨てて買い換えるという生活は、明らかにサスティナブルではない。生産者の顔がわかるものはより安心で、大切に使おうという気持ちもわくだろうし、ちょっとした工夫があれば使いまわしたり修理したりして長く使うこともできる。「地域主義」はトランジションの大きな柱であるが、その一歩として有効なイベントだ。

国連や国家政府が目標を掲げるだけではこの地球規模問題は解決しない。また、どんなにローカルにがんばっても自分たちの町だけサスティナブルでハッピー、ということも難しい。この問題に国境や派閥はないのだ。そして市民の行動が大事と言いつつも、専門家や技術者、行政のサポートも欠かすことはできない。市民の勇気ある一歩、消費者の意識の変化に応えて商工業や政治経済界も必ず変化していくだろう。まさに行政も企業も市民も一体となって「トランジション」する必要があるのだ。

2006年9月、英国ではじめて「トランジション宣言」をしたトットネスに続き、各地でトランジション・タウンが誕生し、活動は勢いを持って広がっている。日本でも、その波動を受け、2008年6月「トランジション・ジャパン・プロジェクト」が結成された。「トランジション」の考え方を普及するための説明会を行うと、会場はいつもいっぱいで、人びとの興味関心の高さ、そしてこの運動に対するニーズの高さが伺える。
専門家がいないからとか、資金がないからできないということではなく、むしろ今自分たちが持っているものに着目しそれらをつないでいくこと、ちょっとした意識の変化で方向性を変えていくこと、そしてそれぞれの地域性や風土を活かしながら小さくてもできることを増やしていくのが「トランジション」のアプローチだ。英国とは違った日本独自、地域独自のプログラムがどんどん生まれるだろう。さきがけて活動をスタートした東京都の小金井、神奈川県の藤野、葉山に続いて、近い将来、日本のあちこちの町で「トランジション旋風」が吹くことを期待したい。

0 件のコメント: